骨粗鬆症
【骨粗鬆症とは】
骨粗鬆症とは骨量(骨密度)が減る、または骨の質が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気を言います。いま現在、骨折や腰・背中の痛みがなくても、骨が弱っていると骨粗鬆症と診断されます。
日本における40歳以上の骨粗鬆症の有病率は男性で3.4~12.4%、女性で19.2~26.5%と報告されており、誰にでも起こりえる疾患です。特に閉経後の女性は急激な進行をしやすいため注意が必要です。
骨粗鬆症により骨がもろくなると、つまずいて手や肘をついた、くしゃみをした、転倒して尻餅をついたなどのわずかな衝撃で骨折してしまうことがあります。
骨粗鬆症による骨折を起こすと寝たきりや認知症につながることがあるだけでなく、生命予後にも関連するため、予防や治療が重要です。
<原因>
骨は成長期にカルシウムを蓄積し、女性は15~18歳頃、男性は20歳前後に人生最大の骨量に達します。成長期以降は「骨リモデリング」と呼ばれる骨の新陳代謝を繰り返しながら、40歳半ば頃まで最大骨量が保たれます。
骨リモデリングにおいては、古い骨を壊す作業と新しい骨を作る作業の両方がバランス良く繰り返されています。しかし、加齢や女性ホルモンの減少、カルシウム不足、運動不足、低体重、喫煙、アルコールの多量摂取、その他には糖尿病や慢性腎臓病、ステロイド薬の内服などにより、この代謝がアンバランスになる事があります。骨の破壊が多くなったり、骨の形成が少なくなったりすることで骨量が減少し、骨粗鬆症に繋がります。
<症状>
骨粗鬆症になると骨密度の減少や骨質の劣化により骨が脆くなり、わずかな外力でも骨折を起こしてしまいます。立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力による骨折を脆弱性骨折と呼びます。骨粗鬆症による脆弱性骨折は脊椎、大腿骨、下腿骨、橈骨、上腕骨、肋骨などに起こりやすいです。
1、椎体骨折
最も頻度の高い骨粗鬆症による脆弱性骨折は脊椎に生じる椎体骨折です。日本人の場合、70代の方では25%、80歳以上の方では43%が椎体骨折を有することが報告されています。しかも半数以上の方が複数個の骨折を起こしています。ただし腰や背中の急な痛みのように症状がはっきりとしている椎体骨折の頻度は1/3程度です。2/3の椎体骨折は痛みなどの症状を認めずに、レントゲンなどの検査により判定されます。この場合も椎体の変形が残存して背中が丸まり(後弯)、身長が以前よりも低下します。立位を保持するために腰背筋への負担が大きくなり、慢性的な腰背痛の原因となります。
椎体骨折が多発して背中が丸まる(後弯)と腹腔や胸腔の容積を小さくし、逆流性食道炎や便秘などの消化器機能障害、呼吸器機能障害、心臓の機能低下などの原因となることがあります。
2、大腿骨近位部骨折
70歳以上になると大腿骨近位部骨折のリスクが急激に上昇します。そして大腿骨の骨折は寝たきりに結びつき、骨粗鬆症による脆弱性骨折の中でも最も生命予後を悪化させます。大腿骨近位部骨折後1年の死亡リスクは非骨折者と比較すると男性で3.7倍、女性で2.9倍に高まることが報告されています。介護を必要とする状況になってしまうだけでなく、大腿骨近位部骨折後の10年生存率は26%であり、最も予防しなければならない脆弱性骨折の1つです。
<診断>
1、骨密度検査
骨密度は、骨の強さを判定するための代表的な指標です。骨密度検査では、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを測定します。
骨密度は若い人の骨密度の平均値(YAMと表現します)と比べて自分の骨密度が何%であるかで表されます。骨密度がYAMの70%以下で骨粗鬆症と診断します。
2、レントゲン検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨粗鬆症の有無を確認します。脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折があれば骨粗鬆症と診断されます。
また、橈骨遠位端骨折や上腕骨頸部骨折があり、かつ、骨密度がYAMの80%未満である場合も骨粗鬆症と診断されます。
3、身長測定
25歳のときの身長と比べどのくらい縮んでいるかは、骨粗鬆症を診断するうえでの指標になります。
<治療>
骨粗鬆症の治療にあたってはあくまで「運動」と「食事」の2つが基本となります。それに加えて骨を作るサイクルを整えるために適宜、薬物療法が用いられます。
1、運動
骨は適度な負担をかけることでさらに強くなるという性質があります。無理のない範囲で適度な運動を加えることで骨に良い刺激が伝わり、骨代謝が活性化されます。同時に骨を支えるための適度な周りの筋肉量も必要となります。運動療法としてウォーキング等の有酸素運動に加えてスクワット等の筋力訓練を併用すると効果的です。
2、食事
骨を作るために主に必要とされる成分はカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質などです。カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。
また、高齢になると、食の好みが変わったり、小食になったりしてタンパク質の摂取量は不足する傾向があります。 タンパク質の摂取量が少ないと骨密度低下を助長しますので、意識して摂取しましょう。
栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのが、食事療法の基本です。これらの栄養素を毎日の食事にバランス良く取り入れて過不足なく摂取することが大切です。
- カルシウムを多く含む食品:牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆・大豆製品
- ビタミンDを多く含む食品:魚類、きのこ類
- ビタミンKを多く含む食品:納豆、緑黄色野菜
- タンパク質:肉、魚、卵、豆、牛乳、乳製品
一方で、控えめにしたい食品は、カップ麺やスナック菓子です。これらは塩分が多く、腎臓からカルシウムの排泄が増えてしまう可能性があります。避けたい嗜好品は、アルコールの多飲、タバコ等です。アルコールは、骨芽細胞の働きを阻害する可能性があります。また、タバコは、腸管からのカルシウム吸収を低下させます。
3、薬物療法
骨粗しょう症の薬は大きく3つに分類されます。
ⅰ)骨吸収(骨を破壊する)を抑制する薬
骨吸収を緩やかにすることで、新しい骨が骨の吸収された部位にきちんと埋め込まれ、骨密度の高い骨が出来上がります。
- ビスホスホネート製剤 ミノドロン酸(ボノテオ錠R)
- 選択的エストロゲン受容体モジュレーター バゼドキシフェン(ビビアントR)
- 抗RANKL抗体薬 デノスマブ(プラリア皮下注R)
ⅱ)骨形成(骨を作る)を促進する薬
- 副甲状腺ホルモン製剤 テリパラチド(フォルテオR)
- 活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドールR)
- カルシウム製剤(アスパラカルシウムR)
ⅲ)「骨吸収」と「骨形成」両方に作用する薬
- ヒト化抗スクレロスチン抗体製剤 ロモソズマブ(イベニティ皮下注R)
<まとめ>
骨粗鬆症による骨折、特に大腿骨(足のつけ根)を骨折すると入院や安静を強いられ、運動機能や内臓機能が低下して寝たきりにつながりやすく、寝たきりから介護が必要になってしまう可能性があります。また、認知症が進行する可能性もあり、死亡リスクも高くなります。その他に、骨の変形による体全体の大きなゆがみを生じさせます。直接的に感じる痛みだけでなく、背骨が曲がると内臓の圧迫から消化器機能障害、呼吸器機能障害、心機能障害などの原因となることがあります。
症状が無くても、女性は40歳を過ぎたら定期的に骨密度検診を受けましょう。
わが国では、40歳以降の女性を対象に5年刻みに骨密度の節目検診が行う自治体が多くなっています。特に閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいでしょう。
検診で骨密度が減っていると判定された人は、指示された時期に医療機関で診断を受け、治療の時期を逃さないようにしましょう。