頭痛

【頭痛とは】

頭痛は、全人口3人に一人が経験する大変一般的な症状の一つですが、様々なタイプがあり、国際頭痛分類第3版では300種類以上に分けられます。

頭痛は、大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分けて対応することが重要です。一次性頭痛とは、頭痛の9割を占め、他にはっきりとした病気や原因が判明せず、いわゆる頭痛持ちの頭痛のことです。一方、二次性頭痛は何らかの病気が原因で起こる頭痛のことを言います。二次性頭痛は、頭痛全体の1割と頻度は少ないものの、脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍など、生命に関わる病気が原因となっていることがあり、注意が必要です。

<一次性頭痛>

頭痛の9割を占める一次性頭痛は、命に関わる重篤なことではありませんが、繰り返すことが多く、生活に支障をきたすことがある点で問題となります。代表的なものには、①片頭痛、②緊張性頭痛、③群発頭痛があり、3大慢性頭痛と呼ばれます。

①片頭痛

日本人の約8%、約1000万人が片頭痛に悩まされ、特に女性に多く見られます。

片側あるいは両側のこめかみから目にかけてズキズキとした痛みを感じますが、ズキズキしない場合も約5割あります。頭痛以外にも吐き気や嘔吐などを伴うことも多く、光や音、匂いなどに敏感になるといった症状が見られることがあります。そのため、静かな暗い部屋でじっと寝ていることが多いです。

片頭痛により、寝込んでしまったり、日常生活に支障が出たりする人は約7割と多い一方で、医療機関に受診している人や受診したことがある人は約3割と多くの方が市販薬で対処しています。したがって医療機関を受診し、適切に診断し、コントロールすることが必要です。

片頭痛の治療はⅰ)生活習慣の改善による予防、ⅱ)急性期治療、ⅲ)薬物による予防療法があります。

ⅰ)生活習慣の改善による予防

片頭痛を起こす誘因としては以下のものがあります。

  ・睡眠不足

  ・睡眠過多 

  ・肩こり

  ・過労やストレス

  ・緊張

  ・多量の飲酒

  ・食品(ワイン、チーズ、レバー、チョコレートなどチラミンを多く含む食品)

 これらを可能な限り避ける、片頭痛の誘因を少なくすること、具体的には以下が、行うべき取り組みになります。

  ・寝不足、寝過ぎを避ける

  ・同じ姿勢を続けない

  ・疲労やストレスや貯めすぎない

  ・多量の飲酒やチラミンを多く含む食品の摂取を控える

 ⅱ)急性期治療

薬物治療が中心になります。

軽症の場合には、アセトアミノフェン(カロナールR)やロキソプロフェン(ロキソニンR)等の鎮痛剤を使用します。中等症以上では、トリプタン系薬剤でありスマトリプタン(イミグランR)、リザトリプタン(マクサルトR)、エレトリプタン(レルパックスR)、ゾルミトリプタン(ゾーミックR)、ナラトリプタン(アマージ®)を用いることが一般的です。効果を十分に発揮させるためには、頭痛発症から1時間以内に内服する必要があります。同じ薬でも、個別に合う、合わないがありますので、最適なトリプタン系薬剤を選択します。

その他には、2022年6月に発売されたラスミジタン(レイボーR)があります。トリプタンのように血管の収縮は起こさないため、脳や心臓の血管に狭窄がある方にも安心して使用できるなどのメリットがあります。また、トリプタン製剤と異なり、頭痛開始から1時間を過ぎて内服しても効果があることが証明されています。

ただし最初の内服ではめまい、ふらつきなどの副作用が3人に1人程度出現します。眠気なども伴うため内服後8時間は自動車の運転などはできません。2〜3回の内服によりこれらの副作用は軽減します。

仕事中などのため頭痛が始まってからトリプタン製剤を1時間以内に内服出来ない方、トリプタン製剤は効果的だが頭痛がぶり返しやすい方などに特に勧められる薬です。

 ⅲ)薬物による予防療法

片頭痛の予防薬は、鎮痛を目的とするのではなく、頭痛の回数や頭痛発作時の頭痛の強度を軽減することが目的です。

  ロメリジン(ミグシスR)、プロプラノロール(インデラルR)、バルプロ酸(デパケンRR)、トピラマート(トピナR)、アミトリプチリン(トリプタノールR)、呉茱萸湯など 

が処方可能です。これらの予防薬が無効、あるいは、副作用等で使用できない場合には新たな治療薬であるCGRP関連薬剤であるガルカネズマブ(エムガルティR)、フレマネズマブ(アジョビR)、エレヌマブ(アイモビーグR)が使用可能です。

CGRP関連薬剤は皮下注射して使用し、CGRPをブロックすることで作用を発揮します。投与間隔は概ね1ヶ月毎です。投与1週目から効果が認められます。

※補足 CGRPとは

カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、神経細胞から分泌される物質です。片頭痛発作中に血液中のCGRPの濃度が高くなり、片頭痛患者さんにCGRPを投与すると頭痛が誘発されることが報告されています。三叉神経がCGRPを分泌し、脳の血管が拡張し、炎症を起こすことで頭痛が起こります。

・ガルカネズマブ(エムガルティR

CGRPに対する抗体であり、CGRPの働きをブロックします。月1回注射する、片頭痛の「予防薬」です。発作回数を減らし、発作時の痛みも軽減作用があります。即効性が有り、臨床試験では、6カ月間の使用で片頭痛の日数が減った人の割合は下記の通りです。
50%減:67%

75%減・:39%

100%減:21%

予防の内服薬が効かなかった患者さんにも効果が証明されています。また、片頭痛発作がゼロになることは、いままでの予防薬では難しいとされていますが、約2割の人は頭痛発作が消失します。

エムガルティRを使用するに当たり、以下は必須です。

  • 医師に片頭痛と診断されていること。
  • 片頭痛が過去3か月の間で、平均して1か月に4日以上。
  • 従来の片頭痛予防薬の効果が不十分、または内服の継続が困難な場合。
  • 妊娠中・授乳中は、十分検討した上での「慎重投与」可。
  • 18歳未満の小児は「使用不可」。

 使用方法は、初回は2本皮下注射し、翌月から、毎月1本ずつ注射します。

 費用は保険適応です。3割負担の場合、1本あたり13,550円です。

 

・フレマネズマブ(アジョビR

エムガルティR同様にCGRPに対する抗体製薬です。

治療効果は以下の通りです。

50%減:60%    

75%減:40%    

100%減:15%

エムガルティRと異なる点は、初回から1本の接種(エムガルティRは初回は2本)で良いです。

唯一3本同時接種が可能です。(3か月周期での通院が可能です。ただし、最初の数回は1本ずつの接種をお勧めしております)

1本あたり3割負担の場合、12,400円 です。

 

・エレヌマブ(アイモビークR

エムガルティR、アジョビRと同様にCGRP関連抗体製剤ですが、CGRPを直接ブロックするのではなく、CGRPが作用する受容体をブロックすることで作用を発揮します。

アジョビRと同様1回目から1本で良いです。

4週間に1回接種を行います

治療効果は以下の通りです。

50%減:60%    

75%減:38.5%    

100%減:19.8%

1本あたり3割負担の場合、12,400円 です。

 

いずれのCGRP関連製剤も注射部位の発赤、疼痛以外はほとんど副作用がありません。また、10人に1から2人は片頭痛がほとんどなくなってしまう、など有効性が高く、非常に期待できる予防薬といえます。
さらに3剤ともに、自己注射も認められており、適切な指導のもと、ご自宅で接種することも可能です。

②緊張性頭痛

緊張性頭痛は、デスクワーク等により長時間同じ姿勢でいることによる血行障害をはじめ、肉体的・精神的ストレス、頚椎症や肩こりなどが原因となって、後頭部から首にかけての筋肉が緊張して発症する頭痛です。日本人のなかでは最も多い頭痛です。

主な症状は、頭重感や頭全体が締めつけられたような痛みです。寝込んだり、吐いたりすることはほとんどなく、片頭痛に比べて程度は弱いのが特徴です。一度発症すると数時間~数日、もしくはもっと長期にわたって続くようになります。また人によっては、めまいや立ちくらみ、耳鳴りなどがみられることがあります。

一般的な鎮痛薬を用いて治療することが多いのですが、適切な薬の選択が重要です。

また、原因である肩こりを如何に、軽減していくかなど、予防も重要です。

③群発頭痛

群発頭痛は眼周囲~前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週から数ヵ月の期間群発することが特徴です。夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく、頭痛発作時に眼の充血や流涙、鼻汁や鼻閉、縮瞳と眼瞼下垂(まぶたが下がること)などの症状を伴うことが多いことも特徴です。また、頭痛発作中は落ち着かず興奮したような状態になる方が多く、動けなくなる片頭痛とは対照的です。

頭痛発作時の急性期治療としては、通常の鎮痛薬は無効です。スマトリプタンの皮下注射(保険適用)、酸素吸入(マスクで純酸素7~10L/分、15分間)(2018年4月に群発頭痛の在宅酸素療法の保険適用が承認されました)が効果的です。

群発期には予防療法が必須です。予防療法には高用量のベラパミル(ワソランR)(適用外使用)が最もよく使用され、国際的な標準薬です。また、副腎皮質ステロイド(適用外使用)もよく使用されます。慢性群発頭痛の予防には炭酸リチウム、バルプロ酸などが有効とされています。

<二次性頭痛とは>

脳の病気を発症したことで起きる頭痛のことで、症候性頭痛とも呼ばれています。脳血管障害(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎、頭部外傷などが原因となって起きる頭痛です。以下のような特徴が有ります。

    1. 急または突然に出現した頭痛
    2. 今まで経験したことがない頭痛
    3. いつもと様子が異なる頭痛
    4. だんだんと頭痛の頻度と程度が増えていく頭痛
    5. 50歳以降に出現するようになった頭痛
    6. 発熱を伴う頭痛
    7. 癌の治療中または診断されたことがある方の頭痛
    8. 意識が朦朧とする頭痛
    9. 麻痺などの神経症状のある頭痛
    10. 怪我や交通事故などの外傷後に出現した頭痛

これまで脳に関する病気というのは一度も罹ったことはないものの、最近になって強い頭痛がみられるようになった(つまり中年以降になって初めての頭痛)、手足にしびれや麻痺がある、さらに発熱や嘔吐を伴う、突然激しい頭痛を発症した、という場合、重大な脳の病気を罹患していることも考えられるので、早期に受診してください。

適切な問診、診察に加えて、頭部MRI検査や頭部CT検査を行うことで二次性頭痛の原因を診断し、治療を行うことが重要です。

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